体育館の隅からハンマーストレングスへ

バーベル1本のころ

社会人として働きながら、本格的にトレーニングを始めたのは30代半ばくらいでした。
正確には、学生時代の部活で補強トレーニングとしてバーベルには触れていたので「完全な初心者」ではありません。それでも、「自分の意思でちゃんとトレーニングしよう」と腹をくくったのは、その頃です。

頭の中にあったイメージは、とてもシンプルでした。

足はスクワット、背中はデッドリフトと懸垂、胸はベンチプレス。
とにかくビッグ3をやり込みたい。

ところが、当時は今のようにフリーウェイト環境が整ったジムが身近にある時代ではありませんでした。

  • フリーウェイトエリアが小さい
  • ラックがあっても雰囲気的に床引きデッドなんて絶対無理
  • そもそも「重い音を立てる」こと自体が歓迎されない

近所で見つかるのは、普通のスポーツクラブばかり。
マシンやスタジオは充実していても、「がっつりバーベルを引く場」としてはどうにも使いづらい。そんな環境でした。

「これではビッグ3をやり込むイメージと合わないな」と感じて、発想を変えました。

じゃあ、ウェイトジムじゃなくて体育館を探そう。


冷暖房のない体育館の隅で、ビッグ3だけをやる時期

ようやく見つけたのは、冷暖房もない体育館の片隅にあるトレーニング室でした。

  • パワーラックはない
  • 代わりに、昔ながらの3段式スクワットラック(正式名称は今もよくわからない)が1台
  • ダンベルは40kgまで
  • 利用料は一回150円
  • ほとんど誰も来なくて、だいたい貸し切り状態

今の感覚で見るとかなり素朴な設備ですが、当時の私にはこれで十分でした。
むしろ「貸し切りに近くて、多少音を立てても何も言われない」という状況がありがたかったくらいです。

そこでひたすらデッドリフトをやり込みました。
フォームを試行錯誤しながら、少しずつ重量を伸ばしていく。
冷暖房のないトレーニング室で汗をかきながら、気の済むまでバーベルを握っていられるのが楽しかった。

トレーニング内容も、今振り返ると驚くほどシンプルです。

  • 足:スクワットしかやらない
  • 背中:デッドリフトと懸垂
  • 胸:ベンチプレス
  • 補助種目はほとんどやらず、重さの追求がすべて

「種目を増やす」という発想よりも、少ない種目をどれだけ真面目に続けられるか、という感覚に近かったと思います。

あるもので工夫してトレーニングする、というのもこの頃からで、その体育館にはインクラインベンチがなかったので、フラットベンチを2つ用意して片方の足を載せて斜めにしてインクラインベンチにしたり、ロープハンドルがなかったのでトラロープ切ってきて引っ掛けて使ったり…


転勤で環境が変わり、ゴールドジムへ

そんな体育館生活を続けているうちに、転勤が決まりました。

新しい勤務地の周辺を調べてみると、今度はわりと近くにゴールドジムがあることがわかりました。
当時の感覚では「本物のトレーニングジムが近くにある」というだけで、かなり特別なことでした。

せっかくの機会なので、一度見学を兼ねて入会の申し込みに行ってみることにしました。

その頃は、今のように各地にハンマーストレングスやプレートロードマシンが当たり前のように置かれている時代ではありませんでした。
少なくとも、私の生活圏の中にはほとんど見かけない存在でした。


ワイドチェストに座った瞬間、「これは何だ?」となった

入会の申し込みに行った日、トレーニングウェアを持って行ったわけではなかったので、その場で本格的にトレーニングをするつもりはありませんでした。

受付や手続きがひと段落したあと、トレーナーの方とフロアを軽く見て回りながら雑談をしているときに、

「一回座ってみます?」

と勧められて、何気なく座ったのがハンマーストレングスのワイドチェストでした。

プレートは何もつけていません。
本当に「ちょっと動かしてみましょうか」くらいのノリで、

  • シートに座って
  • ハンドルを握って
  • 何度か前後に動かす

ただそれだけでした。

それでも、最初の一押しで「あれ?」と思いました。

プレートが載っていないはずなのに、
肩から胸にかけての軌道が、あまりにも自然に胸に負荷を集めてくる感覚があったからです。

その当時、ハンマーストレングスのようなプレートロードマシンは、私の生活圏ではまずお目にかかれませんでした。

  • レバー式のマシンはあっても、ここまで洗練された軌道のものは少ない
  • プレートロードという方式自体、身近ではほとんど試せない

そういう背景もあって、ワイドチェストを動かしたときの感覚は、かなりの衝撃でした。

「こんなふうに、胸だけに素直に入るマシンがあるんだ」

それまで私の中では、

  • 胸=ベンチプレス
  • マシン=あくまで補助か、なんとなくやるもの

というイメージが強かったのですが、
その一瞬で「マシン」という存在への見方がガラッと変わりました。

実際にプレートをつけて追い込んだわけでもないのに、
「これをちゃんと使ったら、相当いい刺激になるだろうな」と、直感的にわかる感じがあったのだと思います。

ここが、今振り返るとジム沼・マシン沼の入口でした。


バーベル1本で育ててもらって、マシンで世界が広がった

こうして振り返ってみると、自分のトレーニングのルーツは大きく二つに分かれます。

  1. 冷暖房もない体育館の隅で、ビッグ3だけをひたすらやり込んでいた時期
  2. 転勤をきっかけにゴールドジムへ行き、ハンマーストレングスのワイドチェストに出会った時期

前半の「体育館時代」があったからこそ、

  • どこの街に行っても
  • どんなジム環境でも

「バーベルとダンベルさえあれば、とりあえずトレーニングは成立する」

という感覚が身につきました。
これは今でも、メニューを組むときの根っこに残っています。

一方で、ワイドチェストをきっかけにして、

  • マシンごとの軌道の違い
  • 骨格や関節の動きとの相性
  • 「このマシンは誰向けに作られているんだろう」という興味

こういった視点が生まれて、ジムやマシンそのものを見るのが楽しくなりました。

  • バーベル1本でトレーニングを教えてもらった時期が土台になっていて
  • そこにマシンとの出会いが乗って、今の「ジム巡り・マシン観察」という趣味につながっている

そんな流れなのかなと思っています。


今に続く「好きなもの」

今、私はフリーウェイト中心でトレーニングを組みつつ、
新しいジムに行けばついマシンのラインナップを眺めてしまいます。

  • 「このジムはどこのメーカーが多いんだろう」
  • 「このワイドチェストは昔触ったあの感覚に近いかな」
  • 「このマシンは誰の体格に合わせて設計されているんだろう」

そんなことを考えながらトレーニングしている時間は、単純に楽しいものです。

体育館の隅っこで、借り物の3段ラックと150円の利用料から始まったトレーニングが、
気づけば、ジムとマシンを見て歩く今の趣味につながっている。

そう考えると、あの冷暖房のない小さなトレーニング室で、
黙々とデッドリフトを引いていた時間にも、ちゃんと意味があったのだと思います。

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