
結論から
筋肉を動かすエネルギーの中心は「筋グリコーゲン」です。これをどれだけうまく蓄えて、トレーニング中に活用できるかで、筋肉の成長や体のパフォーマンスは大きく変わります。大げさではなく、筋トレを語るうえで「筋グリコーゲンを理解しているかどうか」が分かれ目になるといっても良いでしょう。
筋グリコーゲンとは何か
そもそも筋グリコーゲンとは、炭水化物を食べて分解された「グルコース(ブドウ糖)」に水が結合した形で、筋肉や肝臓に貯蔵されているエネルギー源です。
特に筋肉内に蓄えられているものを「筋グリコーゲン」と呼びます。これは筋肉を動かす燃料のようなもので、トレーニング中の収縮や力発揮はこのグリコーゲンから作られるエネルギーによって支えられています。
面白いのは、筋肉にグリコーゲンがしっかり溜まると筋肉自体が水分を含んでふくらみ、「パンプ」と呼ばれる状態になることです。このパンプは見た目だけでなく、筋肥大に直接関わる要素だといわれています。
つまり、筋グリコーゲンは「動かすエネルギー」であり、「大きくする要素」でもあるわけです。
なぜ筋グリコーゲンが大事なのか
筋トレをしていて「今日は力が入らない」「すぐバテてしまう」と感じるとき、多くの場合は筋グリコーゲンが足りていないサインです。エネルギーが枯渇した状態では、強度の高いトレーニングを続けられませんし、筋肉への刺激も弱くなってしまいます。
さらに、筋グリコーゲンが満たされている筋肉はパンプ感が出やすく、トレーニングのモチベーションも高まりやすいです。逆に枯渇すると、張りのないしぼんだような見た目になってしまいます。
第三者の意見として、ボディビルの分野では「大会前のカーボローディングは筋肉を張らせるための必須テクニック」とも言われています。これも筋グリコーゲンの存在がどれほど重要かを示す一例です。
どうやって筋グリコーゲンを蓄えるのか
筋肉にグリコーゲンを効率よく蓄えるために欠かせないのが「インスリン」というホルモンです。インスリンは食べた炭水化物を分解してできたグルコースを血液から筋肉に送り込み、筋グリコーゲンとして貯蔵させる役割を担っています。
ただしインスリンには「筋肉に栄養を運ぶ」という良い働きと同時に「余ったエネルギーを脂肪にする」という側面もあります。そのため、いつ・どのように炭水化物をとるかが重要になるわけです。
研究でも「インスリン感度が高いタイミングに炭水化物をとることが、筋グリコーゲンの回復に効果的」とされています(注1: Ivy, 2001)。
インスリン感度が高いタイミング
一般的にインスリン感度が高いのは「筋トレ直後」と「朝起きてすぐ」の2つの時間帯です。
- 筋トレ直後
激しい運動で筋グリコーゲンが使われた直後は、筋肉がまさに栄養を欲している状態です。このときに炭水化物とタンパク質を補給すると、グルコースは効率よく筋肉に取り込まれ、同時に筋肉の合成も促されます。 - 朝起きてすぐ
睡眠中は食事をとらないため、朝は体内のエネルギーが枯渇しています。このときもインスリン感度が高く、炭水化物をしっかり利用できる状態です。
この2つのタイミングで炭水化物を摂ることが、筋グリコーゲンの補充にとても効果的だと考えられています。
摂りすぎるとどうなる?
もちろん、炭水化物をとればとるほどいいというわけではありません。筋肉にグリコーゲンをためられる量には限界があります。イメージとして「筋肉はコップ、炭水化物は水」と考えるとわかりやすいです。
コップの容量を超えて水を注げばあふれてしまうように、筋肉の許容量を超えて炭水化物をとれば余った分は脂肪として蓄積されます。これは「筋肉の成長」と「脂肪の増加」が紙一重であることを示しています。
だからこそ、必要なタイミングで、必要な量をとることが大事なんですね。
実際にどう工夫する?
トレーニングをしている人の中には、筋トレ後に炭水化物を素早く摂取するために「カーボサプリ」を使う人もいます。粉末を水に溶かして飲めば、消化吸収が速くて効率的だからです。もちろん、バナナやおにぎりといった手軽な食品でも問題ありません。
大切なのは「インスリン感度が高い時間にエネルギーを入れる」こと。逆に夜遅い時間の大量摂取は脂肪になりやすいので注意が必要です。
まとめ
筋グリコーゲンは筋肉のエネルギー源であり、筋肥大を支える重要な要素です。
- 炭水化物から作られ、筋肉に貯蔵される
- 筋肉をパンプさせ、成長にもつながる
- インスリンの働きで筋肉に運ばれる
- 筋トレ直後や朝に補給すると効果的
- 摂りすぎると脂肪になる
筋トレをするなら、筋グリコーゲンの性質を理解しておくことは必須といえます。
私ならこうします
私なら、筋トレ直後は必ず炭水化物を少しとるようにします。例えばプロテインと一緒にバナナを食べたり、軽くおにぎりを加えたり。朝も同じで、まずはエネルギーを補給してから活動を始めます。その一方で、夜は炭水化物を控えめにして体脂肪が増えないように工夫します。こうすれば、筋肉の張りを保ちながら余計な脂肪もつきにくく、長くトレーニングを楽しめると思っています。
参考文献(脚注)
- (注1: Ivy, J.L. (2001). Role of carbohydrate in postexercise recovery. International Journal of Sports Nutrition and Exercise Metabolism, 11(1), 93–113. https://doi.org/10.1123/ijsnem.11.1.93)